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小林よしのり
2015.4.27 01:52

「花燃ゆ」は至誠も攘夷も伝えきれない


昨日の「花燃ゆ」では、吉田松陰が井伊直弼に直接、

攘夷を訴えていたが、あれはないな。

あれは都合よすぎる。

井伊直弼が吉田松陰を知っていたかどうかも怪しいのに、

松陰を大物に見せるために、直接対面したことにしている。

 

しかも、直接対面して議論できるなら、両者の考え方を

明確に視聴者に分からせて、考えさせるところまで

持って行かなければならないのに、あれでは松陰の攘夷の

気持ちも、井伊直弼の本心も全然分からない。

あれでは視聴者がどちらにも感情移入できないではないか。

 

吉田松陰なんか幕府にとっては取るに足らない小物で、

その小物の「至誠」がなぜ歴史を動かすのかを納得させねば、

吉田松陰を描いた意味がない。

「至誠」とは何か?

ドラマではその意味さえ分からぬままに松陰が死んでしまった。

 

幕末好きの知識のある者に向けて作ってるのか、

尊皇攘夷の意味も分からぬ一般人に向けて作ってるのか、

その辺も分からない。

攘夷の意味を、今でも分かるように説明してみせると、

それは米国追従、ガイドライン優先の安保法制を進める

安倍晋三への批判に繋がるから、NHKもそれは描けまい。

元々、「尊皇攘夷」の意味が分からぬ製作者が幕末を描くのは

無理があるのだ。

 

視聴率が悪くても、俳優たちには罪はない。

俳優たちはよくやっている。

わしは批判しながらも、最後まで見る。

創作者の視点から、自分が描くとしたらどうやるかを考える

ために見るのだ。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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